一武という語源

小さい頃の記憶に、大晦日の夜、除夜の鐘が遠くに聞こえると、祖父を中心に家族全員で一武神社に初詣に行きました。提灯を2,3個持って歩き出します。前後にはいくつかの提灯の火が揺らいで見え、「だいや?」だれなのかと声をかけます。そして揺らめきの中で新年の挨拶が行なわれ、それぞれの集団で歩み出します。今思えば、私の集落、西原を通る道は一武神社への唯一の参道でした。お正月の初詣の時ぐらいは、こんなに人通りがあったのでした。
 一武神社に着くと、かがり火があり、手をすすぎうがいをして、神社の中に上がります。板敷きの間に正座して記帳します。お詣りする戸、出口近くにある囲炉裏に居られる方に挨拶をします。そして実は楽しみなことに、赤酒のおとそを小皿に入れて舐めるように飲みます。これが子供でも飲めるような甘さでした。これを体験して初詣したという実感が湧くのです。
 初詣の帰りも、提灯を持って夜中道を歩きます。街灯もない暗いはずなのに、夜空は満天の星空であり怖くはなかったのです。家に着いたら、もう子供たちは寝てしまうのですが、朝起きたらお正月というドキドキ感がありました。